今こそ心ととのえる書を
伝えていきたい

自由な表現という言葉をよく耳にするせいか、書の世界でも、目に飛び込んでくるインパクト重視の表現が増えている。書道とは約三千年前に伝達するツールとして誕生した文字の美しさを突き詰めていく学問・芸術であり、書聖と呼ばれる王羲之然り、中国における歴代の書人、また日本でも空海や藤原行成はじめ各時代の能書家たちは、先人の書を踏襲して美しい書を世に残している。そこには個や技法といったアピールとは逆の、余計なものを盛り込まず、削ぎ落とすからこそ宿る品格が存在する。現代にあっても、先人の書が守られ学ばれているのはその美しさと品格が普遍的であるからであろう。

書道にある「道」とは、本来、先人に習い修練を積むことで自身と向き合い高めていくことを指している。
 無心になって書くとはよく聞く言葉であるが、これは自分がどんな線を引いているか、筆はどう動いているか、紙に墨はどんな色を残しているか、の今一点に心を集めることである。また、墨を磨るという行為は、急がず、丁寧に磨っていかなければ、目的にあった濃度にならない。中国・宋代の書家の蘇軾(そしょく)の言葉にも「人墨を磨るに非ず、墨人を磨く」の心を大事とするとあるが、墨を磨ることに心を集めることが、その人を高めていく。この王道ともいえる「道」を大切にすることこそが、心をととのえることに繋がっていく。

書というものは、原則として黒と白から成る。黒々と書かれた線につい目が行きがちだが、そこには線の周り、或いは線が取り囲む空間の白が存在する。この白は「余白」。余ったのではなく、わざと余らせる、作るのである。白が黒を、黒が白を活かしあうのが書の美しさであり、奥深さである。

忙しない現代人の暮らしの中に余白はあるだろうか。余白が心をととのえるといっても過言ではない。

お知らせ

プロフィール

書家
Tatsumi Shiei辰巳紫瑛

6歳の時から書を学び始める。生き物のように動く筆運びに夢中となり、9歳の時に「ゆめ」で文部大臣賞を受賞。さらに高校時代に書の古典である王羲之の「蘭亭序」と空海の「風信帖」を学び、益々書の世界に魅了されるようになる。専門的な知識と技術を学ぶため、特別書道科のある奈良教育大学特別書道科に進学。東洋で古来受け継がれてきた伝統文化としての書を学究。さらに同大学院にて、五書体(篆・隸・草・行・楷)の中でも行・草体を第一の研究分野とする。
学生時代より宮崎葵光に師事。
近年は禅語や漢字仮名交じり書(調和体)にも学究の幅を広げている。

2015年より毎年、稲毛神社の「有名人慈善絵馬展」にて推薦作家として出品。
2022年・2023年「日本の書展」出品。2007年には桐蔭学園中学校にて書道講師

小田原にて青冰書道会主宰。 大阪府出身
神職者を対象とした書の指導などにもあたっている。

賞歴等

2012 (H24)
  • 日本書芸院大賞受賞
2013 (H25)
  • 日本書芸院大賞受賞
2014 (H26)
  • 日本書芸院二科審査会員に昇格
2016 (H28)
  • 読売書法展秀逸受賞
  • 日本書芸院展大賞受賞
  • 報徳二宮神社主催の日中交流の場にて席上揮毫
  • 読売書法展秀逸受賞
  • 読売書法会評議員に昇格
2017 (H29)
  • 読売書法展読売奨励賞受賞
  • 読売書法会幹事に昇格
2019 (H31)
  • 日本書芸院展大賞受賞
  • 日本書芸院一科審査会員に昇格
2022 (R4)
  • 日本書芸院展史邑賞受賞
2024 (R6)
  • 日本書芸院展史邑賞受賞
  • 読売書法展読売俊英賞受賞

教室案内

青冰書道会 せいひょうしょどうかい

心ととのえる書の教室

現代は「速い・簡単・便利」を良しとする風潮のせいか、人は常に時間や仕事に追われ、膨大な量の情報に翻弄される日常を生きています。移ろう季節を感じることや、自分に向き合うことが後回しになっているように感じています。

書道というものは、筆・墨という手間暇のかかる、今では非日常となった筆記具を使い、二度と消すことのできない線を紙に残していきます。
生き物のように動く筆先や紙に残る墨の跡、佳い具合になるようにと丁寧に行う墨磨りに心を集めている時間は、雑音・雑事・雑念を消し、己と静かに向き合う、豊かなひとときとなります。

講座

一般部

筆の持ち方からはじめ、先生のお手本を見て書いていきます。手書きの良さを味わい、書の持つ魅力や歴史に触れ、書の奥深さを愉しんでいただけます。初めて筆を持つ方や子どもの時の経験だけという方でもどうぞお気軽にお越しください。競書雑誌への投稿や昇級も目指せます。

研究部(本格書道)

子どもの時に経験した「習字」とは、正しい文字を整えて書くことが目的でした。「書道」はそれとは違い、伝達のツールとして誕生した文字を、時代と共に先人たちが守り、発展させきたもの(古典作品)を追体験し学ぶ(臨書)ことで、古典の書の持つ普遍的な美しさに触れ、自身の書に取り込んでいきます。これは自身を高めていくことにもなり、書道の奥深さを知ることで生涯の学びとなることもあります。

大人の万年筆講座(講座開設準備中)

科学が進歩し、世の中のスピードが上がる中、持ち運びや扱いが簡単になった筆記具が多く使われています。一方、万年筆は日常の筆記具として使われることが減りましたが、万年筆といえば大人の持ち物で、ゆとりと気品をもたらすものという認識は今も根強く残っています。
この万年筆。「筆」とあるように、筆のように繊細で美しい動きと線を残してくれます。この万年筆の持つ魅力を体感しながら、美しい日本の文章を題材に、ゆったりとお稽古していく大人のための講座です。

入会のご案内

入会金 不要です
年会費 5,000円
月謝
一般部
7,000円(月2回×2h)
研究部
8,000円(月2回×2h)
  1. 準備・片付けの時間も含みます。
  2. 競書誌希望の方は別途月650円(半期分3,900円を3月・9月に前納)です。
  3. 条幅サイズ以上の手本代は別途申し受けます。
体験料金 4,000円
備考
  • プライベートレッスンもお受けいたします。
  • お1人様2時間10,000円(交通費別途)
  • グループでの開催の場合はお1人追加ごとに8,000円
  • 会場のご用意をお願いいたします。
稽古日
金曜
18時~20時 (書道)
土曜
10時~12時 (書道)

お願い

お道具はご自分のものをお持ちくださいませ。日頃使い慣れたものが書く時のリラックスをもたらします。また、道具の手入れをされることで書く時間を大切に思え、書道具への関心や愛でる楽しみに繋がります。

  • お道具の用意につきましてはご相談をお受けしております。

お休みされる場合はご一報くださいませ。その回は通信添削に振替が可能です。
レターパック(青色)にてご郵送して下されば、添削しご返送いたします。
その際は返送用のレターパック(ご自身の宛名をお書きください)を同封してください。

月謝は月初めにお持ちください。当会では、筆でご記名いただいた白い封筒に入れていただいております。書を学ぶ意識を高め、筆を持つ機会を増やすことが目的です。
何より、ご自分の名前を筆で書く練習になります。

交通アクセス

住所 〒250-0011
神奈川県小田原市栄町1-1-27
おだわら市民交流センターUMECO内
アクセス
電車でお越しの方
JR・小田急小田原駅東口より東に徒歩3分
  • 小田原城址公園手前
お車でお越しの方
UMECO2階より上の小田原東口駐車場をお使いになると便利です。

コラム(徒然)

墨の香と筆の音を傍らに、
日々の想いを綴っております。